あまり知られていないFUT(ストリップ法)の弊害について

植毛の手術方法ではFUEとFUTのどちらを選ぶべきかという話は尽きないわけですが、同じことは海外でも起こっています。

結論としてはどちらも一長一短があり、そのひとの状態に合わせた術式を選ぶことがもっとも重要だと思います。



あまり知られていないFUT(ストリップ法)の弊害について

そんな中で今回はFUT(ストリップ法)のあまり知られていないリスクについて海外の情報から見つけたトピックをご案内します。

参考 The pros/cons of FUE. Myths dispelled.hairrestorationnetwork

FUTの傷は優れた医師でも目立たなくできるという保証はない

FUTというのは担当医師の経験、技量、縫合方法をもってしても

傷痕は目立ってしまうことがあります。

web上で見つけることのできるFUTの症例では一本線で目立たないことが多いです。

下の画像は縫合がほとんど目立たない例です。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

 

しかし、次の画像は悪い例でして、傷が上下に伸びていまったか、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)となって

ストリップの傷が目立ってしまっている例です。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

FUT(FUSS)は体質がおおいにかかわってくるとおもう

このような例は決して稀というわけでもなく皮膚の体質が関わっていることもあります。

つまり、FUTにおいて傷が目立つか目立たないかは医師の技術ではコントロールすることはできないかもしれません。

年齢も若く後頭部の毛量が豊富であれば髪の毛でほとんど隠れてしまうレベルでもあります。

ただし、本来AGAの影響を受けない後頭部ですが老化とともになんらかの原因で後頭部も薄くなってしまったらどうでしょう。

実際に18年前にKクリニックで(FUT)植毛を受けたかたの例です。

この方は20年近く経過したのち後頭部の地肌が薄くなったというものです。

これはCTE慢性休止型脱毛症か老化による原因が考えられるのかな?と予測しています。こういった例はFUEでもよく取り上げられますね。まばらに点の傷を残した結果悲惨な状態に…。とかです。

これって結局はどちらも同じだとは思いますね。

要は20年後、30年後、40年後は必ず年を重ねますので何が起こるかはわかりません。僕にもびまん性脱毛症の傾向がありますから

今よりも年を重ねたとき万が一後頭部の地肌が露出してきたら

どんな傷だったら許せるか?
どんな傷だったら不自然じゃないか?

それをを考えたらFUEだったという話なだけです。

FUTは神経損傷の可能性が高くなる?

FUTは術後、数年経過しても傷口にしびれや刺痛の感覚が残ることがあります。

皮下には細かな神経が分布していますがFUTでは下の画像のように深部組織までメスを入れます。

この神経が再調整されるまでの時間がFUEと比較すると遅くなります。これがのちにショックロスの原因になるかは定かではありません。

そのため痺れや痛みの感覚が長く続くことがあります。

それではFUEはどうか?といえば最近のFUEでは浅い刃入れで済むこと、

そもそもパンチ口径が小さいことで神経損傷をFUTよりは遥かに避けることができます。

皮膚の伸展性によるデメリットもある?

伸展性とは「伸び広がる」というような意味です。

この皮膚の伸展性によってFUTは毛量を変えない仕上がりになると言われています。

しかし、FUTにおける皮膚の伸展性はデメリットにもなることもあります。

FUTでは縫合をおこなうさいに上の皮膚と下の皮膚を引っ張て縫い合わせます。

実はこのとき2つの弊害が起こる可能性があります。

  1. 傷側に引っ張られるか
  2. 上下に引っ張られるか
まず傷側の方向に引っ張られたときには

伸展性により、つむじは下降しうなじは上昇するように引っ張られることになります。

このとき、つむじ部分の薄毛が進行している場合では、薄毛が目立ってしまうことにもなります。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

次に傷側とは逆の方向に引っ張られてしまうと傷口に伸展性が起こるわけですから

上の画像のようにFUTの傷は伸びてしまうこともあるというわけです。

FUTは治癒するまでに時間がかかる?

FUTの治癒時間はFUEと比べると長くなってしまいます。

また、瘢痕に残る赤身はFUTの場合6ヶ月以上続くこともあります。

FUEが痛みがないわけではありませんが経験上痛みが続くのは1週間程度でした。

毛の自然な流れが断絶される

上下の毛の向きのパターンが合わないことで不自然になるというものです。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

FUTはメスで一本の切れ込みを入れて採取するような単純なものではありません。

最低でも1cm〜の縦幅をとる必要があります。

この上下の幅を縫い合わせるときに毛の流れが一致しないことが起こります。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

とくに耳の上の側頭部では毛の向きのパターンが違うことが多いです。

のちにそこだけ髪の毛が盛り上がる見た目になることがあります。

極端に太さの違った毛が出会いがしらにぶつかるということもあって、

帽子をカブったようなヘアスタイルになることもあると言われています。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

すぐに気になることはなくても何年も経過してから不満を感じることもあるようです。

また、くせ毛のひとはこの問題は顕著にあらわれやすいとも報告されています。

実はFUTは切断・損傷も起こりやすい

FUTは切断率が低いとか損傷も少ないと言われていますが

これには前々から疑問がありました。

1つは株分け時の損傷ですが、これ以外に海外の報告では

ストリップでのドナー切除そのものによる切断損傷のリスクが報告されています。

仮に30cmの長さでメスを入れたとします。

上端と下端には約60株の毛包が存在すると言われており

メスを入れるさいに毛包を損傷させないことは慎重におこなったとしても難しいそうです。

毛包を生かしたままジグザグにメスを入れるケースは考えられないことから、

どうしてもドナーの端は損傷が起こってしまうというわけです。

結果的にストリップ30cmでは60株を無駄にしてしまう可能性があるということでした。

ただし、株の密度や医師の技量によっては切断損傷の正しい株数は変わるかもしれないと付け加えられています。

確かにのちの縫合までを考えると複雑なメス入れはかなり難しいことが考えられます。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

その点FUEではスポットで株を採取するわけなのでこういった無駄はでないと言えます。

株の選択肢は限られている点

これはブログ内でもどこかで話してしますが、株には細い、太い、1本毛、2本毛、3本毛と

1つの株にさまざまな形態の種類が存在します。


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

上のような株のユニットを適切な部分に移植することこそが自然なデザインを再現できる方法です。

FUEではこの株の種類を選んで取り分けることができますが、

FUTでは剥ぎ取ってしまった帯状ドナーからしか最適な種類を選ぶことしかできません。

このことは結果的にデザインに差がでるケースもあるようです。

こちらは同じ海外のドクターのFUTとFUEの仕上がりを比べたものです。

「上がFUT」「下がFUE」


【出典】The pros/cons of FUE. Myths dispelled.

結果はFUTは太い毛が目立ち、FUEは細い毛が混在し自然な生え際に仕上がっているようにみえます。

同じドクターであっても採取できる株の種類だけでこれだけ仕上がりが違うという画像でもあります。

FUTでは株分けをしますが、それでも選択肢は剥ぎ取ったドナーに限るわけなので自由度は低くなることが予想できます。

こればかりは手術の仕上がりを比較しないとわからないことでもありますし、

どのような株を選んで移植しているかはブラックボックスです。

この点、ヨコ美クリニックなんかはシビアにユニット株を選択しているのではないでしょうか。

あとがき

FUTにもデメリットだけではなくメリットもあります。

FUT後のFUEの手術も可能であるため2回目以降の植毛を考えている場合だとFUTを選ぶひともいます。

いずれにしてもしっかりリスクを解消したうえで植毛手術を検討されたほうが良いです。